おくすり相談 Medicine

静岡新聞「薬の相談室」

電解カルシウムと石灰沈着関係?—余分なカルシウムが原因 必要に応じ医薬品で補給

質問

80才の女性。6カ月前から保健薬として、電解カルシウム30ccとビタミン剤を朝夜空腹時に飲んでいました。最近、CTスキャンで腹部検査を受けた時、血管や臓器に石灰沈着が異常に多いといわれました。電解カルシウムに関係があるでしょうか。

回答

わが国での成人1人あたりのカルシウム摂取量は欧米に比べきわめて低く、1日600mgにもなりません。カルシウムの摂取不足からカルシウム欠乏になると、その不足分を補うため、骨という巨大なカルシウムプールから血液中にカルシウムを余分に押し出します。

つまり、カルシウム摂取不足が血中カルシウムを増大させるという『カルシウムパラドックス』(注:パラドックスは「逆説」の意味で、常識とは逆のこと)が生じます。この余ったカルシウム(悪玉カルシウムと呼ばれています)は動脈や脳に沈着し、石灰化を起こします。動脈に沈着したカルシウムはコレステロールや中性脂肪を呼び寄せ、その結果、動脈硬化や高血圧、痴呆、糖尿病などの生活習慣病の原因になると言われています。

したがって、カルシウムを豊富に含む食品(牛乳や乳製品、小魚や海藻類、大豆)を摂り、必要に応じて医薬品や適正なサプリメントでカルシウムを補給することが大切です。

なお、石灰化は老化や体質でも見られ、石灰化自体は病気というよりも、それにより障害が出て治療が必要なのかが問題です。担当の先生にどのような状態なのかをもう一度お尋ねになってみてください。

(社)静岡県薬剤師会・医薬品情報管理センター所長
大石順子

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