おくすり相談 Medicine

静岡新聞「薬の相談室」

花粉含む健康食品の摂取—減感作療法は専門医受診 自己判断での利用避ける

質問

26才の女性。花粉症の新しい治療法で、花粉エキスをパンにしみ込ませて舌下に置くだけの方法があるようです。花粉が入った健康食品を購入して試してみようと思いますが効果はありますか。

回答

花粉症の治療法の一つに「減感作(げんかんさ)療法」があります。アレルギーを起こす花粉のエキスを少しずつ体内に取り入れて、花粉に対する“慣れ”をつくってしまおうというものです。

この減感作療法で、舌の下の粘膜からエキスを体内に浸透させる「舌下(ぜっか)減感作療法」が注目されています。小さく切ったパンのかけらに花粉のエキスを数滴しみ込ませて舌下に置き、2分間そのまま保ちます。

東京都は「東京都臨床医学総合研究所」と「日本医科大学」に委託して有効性確認の臨床研究を行い、その結果、有効率は従来の方法に近い約7割ということを確かめています。まだ健康保険の適用にはなっていませんが、手軽な減感作療法として普及の期待が高まっています。

減感作療法は、専門的なトレーニングを受けた医師が、標準化されたエキスを用い、開始前に血液検査や皮内テストでアレルゲンの検索を行い、副作用が生じた際、適切に処置できる施設で行われます。花粉症の方が、花粉を含む食品を摂取すると、花粉症の症状が悪化したり、重篤なアレルギー症状(血圧低下、呼吸困難、意識障害等)を起こす可能性があり、意識不明になり入院したような事故も起こっています。自己判断で「健康食品」を減感作療法に利用することは避けてください。

(社)静岡県薬剤師会・医薬品情報管理センター所長
大石順子

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